ランニング障害|総論②「歩きと走りの違い」

  1. 歩けるのに走ると痛いのはなぜ?回内→回外と足部アーチ機構で「負担の増え方」を整理する
  2. 導入:「歩ける」と「走れる」で、足に求められる役割は違う
  3. この記事で分かること(検索疑問から整理)
  4. まず抑えておきたい前提:歩行とランニングは「定義」から違う
    1. 接地時間の割合の違い
    2. 衝撃のパターンの違い
  5. 足は”回内で受け止め、回外で固める”
  6. アーチ機構(トラス/ウインドラス)は「受け止め」と「固める」をつなぐ
  7. 歩行とランニングで、同じ仕組みが”違う割合”で働く
    1. 歩行:安定性が成立しやすい
    2. ランニング:短時間で「受け止めて固める」比率が上がる
  8. 「衝撃×反復」の影響
  9. 足部機能の違い:歩く=安定、走る=弾性(バネ)
  10. 「歩行評価だけでは足りない」チェックポイント
  11. 評価で迷いを減らす3つの軸(衝撃・横ブレ・負荷管理)
    1. 1)衝撃負荷が強まる場面
    2. 2)左右差・横ブレ:着地の安定とステップ幅
    3. 3)負荷管理:距離・強度・頻度の増え方
  12. 改善は何から始めるか:負担を下げるための4つのステップ
    1. ステップ1:負荷を整える(最優先)
    2. ステップ2:痛みの出る場面を記録する
    3. ステップ3:動作の調整を小さく試す
      1. ステップ頻度(ピッチ、ケイデンス)を5〜10%上げる
      2. ステップ幅を「狭すぎない位置」へ調整
    4. ステップ4:必要に応じて環境を調整する
  13. 今日からできる3つ(すぐ始められる最小行動)
    1. 1. 記録を始める
    2. 2. 負荷の急増イベントを探す
    3. 3. ピッチを5%上げて短時間試す
  14. Q&A(FAQ)
    1. Q1:歩けるなら走っていい?
    2. Q2:ランニング障害はどのくらいの頻度で起きるものですか?
    3. Q3:トレッドミルと屋外で何が違う?
    4. Q4:フォームは直すべき?直さないべき?
    5. Q5:ステップ頻度(ピッチ)を上げると負担が増えませんか?
  15. まとめ
  16. noteの紹介
  17. 免責
  18. プロフィール欄
  19. 参考文献欄(一般化)

歩けるのに走ると痛いのはなぜ?回内→回外と足部アーチ機構で「負担の増え方」を整理する


導入:「歩ける」と「走れる」で、足に求められる役割は違う

「歩くのは平気なのに、走ると痛い」
これは臨床でもよく見かけるパターンです。

歩行とランニングでは、足が衝撃を受け止めて(適応して)から、最後に”固める(剛性化する)”までの要求が変わり、負担の出方が変わる場合があるからです。

この記事では、回内→回外という足の基本機能と、足部アーチ機構(トラス機構/ウインドラス機構)を軸に、歩く足と走る足の役割差を整理します。

そのうえで、痛みの原因を「フォームのせい」だけに寄せず、負担の増え方と対策の順番を考えやすくすることを目的にします。


この記事で分かること(検索疑問から整理)

  • 歩けるのに走ると痛いのはなぜか(歩行とランニングの”条件差”)
  • 歩行とランニングは何が違うのか(デューティファクター/フライト期の考え方)
  • 回内(pronation)/回外(supination)とは何か(静的アライメントと動的機能の違い)
  • 足は「受け止め→固める」で何をしているか(回内→回外の切り替え)
  • トラス機構(truss mechanism)/ウインドラス機構(windlass mechanism)とは何か(アーチ機構の役割)
  • 「衝撃×反復」で痛みが出やすくなる理由(垂直地面反力・負荷率の捉え方)
  • 歩行評価だけでは見落としが起こりうるポイント(条件が変わると出方が変わる)
  • 対策は何から考えるとブレにくいか(負荷→小さな動作調整→環境、の順番)

まず抑えておきたい前提:歩行とランニングは「定義」から違う

歩行と走行は、見た目が似ていても「動作の定義」が異なります。
まずはこの前提を整理しておきましょう。

接地時間の割合の違い

歩行とランニングを分ける代表的な考え方に、デューティファクター(Duty Factor: DF)があります。
これは「一歩の周期のうち、足が地面に接している時間の割合」を示す指標です。

  • 歩行: DF > 0.5(両足支持期あり/フライト期なし)
  • ランニング: DF < 0.5(両足支持期なし/フライト期あり)

表:歩行とランニングの定義的な違い

項目 歩行 ランニング
デューティファクター(DF) > 0.5 < 0.5
両足支持期 あり なし
フライト期 なし あり
接地の性質 体重移動の延長 落下の受け止め

フライト期の有無で歩行とランニングは定義が分かれる。この条件の違いが、足に求められる役割配分を変える。


フライト期があると、次の接地は「前に進む体重移動」だけでなく、落下を受け止める要素が強くなりやすい。
同じ距離でも、体に入る負担の”質”が変わります。


衝撃のパターンの違い

ここで押さえたいのは、衝撃には2つの見方があることです。

  • 垂直地面反力(Vertical Ground Reaction Force: vGRF): 地面から身体に返ってくる力の”量”(大きさ)
  • 負荷率(Loading Rate): vGRFがどれだけ”急に”立ち上がるか(増え方の速さ)

歩行とランニングでは、着地直後の垂直地面反力(vGRF)の立ち上がり方や波形が変わりやすいと説明されます。

歩行とランニングの衝撃パターン比較

項目 歩行 ランニング
vGRF波形 二峰性(M字型) 単峰性(接地様式により二峰も)
vGRFの大きさ 体重の約1.0〜1.2倍 体重の約2.0〜3.0倍
負荷率 小さい(緩やかな立ち上がり) 大きい(急激な立ち上がり)

数値や波形は条件や個人差で変動します。


この章のポイント:
歩行とランニングは、DFとフライト期の有無で定義が異なり、着地衝撃の量と急激さも変わる。


足は”回内で受け止め、回外で固める”

回内(pronation)・回外(supination)は、立位で見た**静的アライメント(骨格構造の形)として語られることもあれば、動作中の動的機能(働き)**として語られることもあります。

立位での「回内足」「回外足」は、足関節より下の足部が内側/外側へ傾いた状態です。

この記事では「動的機能」、つまり走行中に足がどう働くか(受け止め→固める)に絞って整理します。

回内と回外の動的機能

機能 役割 局面
回内(動的) 衝撃をやわらげ、路面に適応し、荷重を分散する 受け止め側
回外(動的) 足部を剛性化して推進の土台を作る 固める側

「回内が悪い/回外が悪い」ではなく、量・タイミング・切り替えが走行条件に合っているかが重要。


ポイントは「回内が悪い/回外が悪い」ではなく、量・タイミング・切り替えが走行条件に合っているかです。

切り替えが追いつかないと、足底・アキレス腱周囲・すねなどに負担が集まりやすくなる場合があります。


アーチ機構(トラス/ウインドラス)は「受け止め」と「固める」をつなぐ

足部アーチは「形」ではなく、荷重下で**受け止め(吸収と分散)と固める(剛性化)**の両方に関わります。

内側縦アーチ・外側縦アーチ・横アーチの3つのアーチが荷重下でどう働くかに関わるのが足部アーチ機構である「トラス機構」と「ウインドラス機構」です。

前者は衝撃を受け止める局面、後者は足部を固めて推進する局面に関わります。


  • トラス機構(truss mechanism): 荷重を受けたときに形を保ちつつ力を分散する仕組み
  • ウインドラス機構(windlass mechanism): 母趾背屈で足底が張り、足部が剛性化しやすくなる仕組み(推進の土台を作る)

歩行では許容できる範囲でも、ランニングでは「短い接地時間」「負荷の高い衝撃」「速い切り替え」が重なり、アーチが担う”負担の受け方”が表に出やすくなります。

*この前提があると、次の「衝撃×反復」や「負荷管理 → 小さな動作調整」という整理がつながります。


歩行とランニングで、同じ仕組みが”違う割合”で働く

同じ足の形でも、歩行とランニングで要求は変わります。

歩行:安定性が成立しやすい

歩行は両足支持期があり、速度も相対的に低いため、足部には安定性が成立しやすい条件になります。

受け止める時間が確保されやすく、破綻が目立たないまま移動できることも少なくありません。

ランニング:短時間で「受け止めて固める」比率が上がる

ランニングはフライト期があり、接地は相対的に短く、衝撃が大きくなりやすい。

その中で、足は短時間で衝撃を受け止め、すぐ剛性化して推進へ移るという要求が強まります。

歩行とランニングの要求の違い

動作 時間的余裕 主な要求 負担の出方
歩行 比較的ある 安定を保ちながら荷重移動 破綻しにくい
ランニング 短い 短時間で受け止め→素早く固める 処理が追いつかないと表面化

歩行で「整っている」ように見えても、走行条件では受け止めや固めが追いつかず、負担が表に出ることがある。


*歩行で問題が目立たなくても、走行では短時間処理・高負荷・高速切り替えという条件が同時に重なりやすくなります。

その結果、固め切れない場合でも、固め過ぎる場合でも、痛みとして表に出ることがあります。


この章のポイント:
歩行では許容される足の機能も、ランニングの短時間・高負荷条件では追いつかず、痛みとして表面化しやすい。


「衝撃×反復」の影響

ここまで整理したのは、ランニングで足が担う「受け止め→固める」という流れです。

この流れが崩れやすい条件として、ランニングでは”衝撃が急で(負荷率が高くなりやすく)”、それが”短い間隔で繰り返される(反復)”状況となります。

その中で「受け止め→固める」の切り替えが追いつかないと、骨・腱・足底などの特定部位に負担が集まりやすくなります。

*ランニング障害の痛みは「1回の強い衝撃」よりも、処理しきれない負担がどれだけ続いたかとして現れることが少なくありません。


足部機能の違い:歩く=安定、走る=弾性(バネ)

歩行は相対的に体重移動の要素が前に出やすく、ランニングは伸張‐短縮サイクル(Stretch–Shortening Cycle: SSC)などの弾性要素が関与しやすい、と説明されます。

この違いは、「歩行で問題が目立ちにくいのに走ると痛い」を理解するうえで役に立つことがあります。

また、脚の”沈み込みやすさ”の説明として、脚剛性(Leg Stiffness)が用いられることがあります。
ただし、ここは誤解が生まれやすい点です。

  • 高ければ良い/低ければ良い、とは言い切れません
  • 速度や路面など条件に応じて身体が調節している、と考えられています

*「歩行で安定している」ことと、「ランニングで負担が分散できる」ことは同じではありません。
目的(痛みの軽減/再発予防/パフォーマンス)によって、評価の焦点も変わります。


「歩行評価だけでは足りない」チェックポイント

歩行で「大きな異常がない」ことは良い材料です。
ただし、それは歩行という条件の中での話です。

ランニングでは、以下の条件が重なり、歩行では破綻しない”許容範囲”が走行では越えやすくなります。

  • フライト期があるため、接地は「体重移動の延長」ではなく「落下の受け止め」の要素が強くなる
  • 着地衝撃が大きく、垂直地面反力(vGRF)が増えやすい(体重の2.0〜3.0倍に達しうる)
  • 接地時間が短く、衝撃を短時間で処理しなければならない
  • それが高い頻度で繰り返される(反復)

さらに、静的所見や歩行所見だけでフォームを大きく変えると、過矯正で別部位に負担が移ることもあります。

*「歩行で異常がない」は安心材料ですが、「ランニングでも安全」の証明にはなりません。
逆に、ランニングの一場面だけで原因を決め打ちしないことも大切です。


この章のポイント:
歩行評価は有用だが、ランニング特有の「フライト期・短時間処理・高負荷・反復」条件は別途評価が必要。


評価で迷いを減らす3つの軸(衝撃・横ブレ・負荷管理)

細かいフォーム論に入る前に、まずは整理しやすい軸を3つに絞ります。

1)衝撃負荷が強まる場面

「いつ痛むか」を、原因探しではなく条件整理として扱うと有用です。

着地直後、下り、スピードを上げたとき、疲労終盤などは、負荷率(Loading Rate)の話とつながりやすい場面です。

*痛みが出る”場面”が分かるほど、対策の選択肢を整理しやすくなります。


2)左右差・横ブレ:着地の安定とステップ幅

左右差や横方向の揺れ(前額面・水平面のブレ)が大きいと、膝や股関節に別の負担が集まることがあります。

その「横ブレ」を説明しやすい要素のひとつが、ステップ幅(Step Width)です。

ステップ幅が狭すぎたり不安定、といった要素は、膝や股関節の負担に影響しうるという示唆があります。
そして、条件によっては足部の衝撃吸収や剛性化の仕組みがうまく使われにくくなる可能性があります。

足部は、回内で衝撃を受け止め、回外で剛性を高めることで推進の土台を作ります。

ステップ幅が極端に狭い状態は、条件によってはこの一連の流れを乱し、足部アーチ(トラス機構・ウインドラス機構)が本来担う役割が発揮されにくくなる一因になりうる、という整理が安全です。

*横ブレは単独原因として決め打ちしないほうが安全です。
衝撃や疲労など他の条件が重なったときに目立ちやすいこともあるため、「いつ・どんな条件で」起きるかとセットで扱うと対策がぶれにくくなります。


3)負荷管理:距離・強度・頻度の増え方

外的因子の中で調整しやすく、臨床でも影響が分かりやすいのが負荷です。

痛みが出る前に、距離・頻度・強度が増えたタイミングがなかったかを確認します。

*「フォームを直したのに再発する」場面では、負荷の増え方が原因になっていることも少なくありません。


この章のポイント:
衝撃・横ブレ・負荷管理の3軸で「どんな条件で痛みが出るか」を整理すると、対策の優先順位がつけやすい。


改善は何から始めるか:負担を下げるための4つのステップ

すべての人に当てはまる唯一の答えはありませんが、整理しやすく、失敗が少ない進め方はあります。

ステップ1:負荷を整える(最優先)

距離・強度・頻度のどれが増えたかを確認します。
今の耐性に見合う水準へ戻すのが現実的です。

*負荷が整うだけで、動作を大きく変えなくても落ち着くケースがあります。


ステップ2:痛みの出る場面を記録する

「いつ痛むか」を条件整理として扱うと、対策が絞りやすくなります。

痛みの出る場面と考えられる要因

痛みの出る場面 考えられる要因
着地直後 衝撃吸収(回内)の問題
蹴り出し時 剛性化(回外)または推進の問題
下り・スピードアップ時 負荷率(Loading Rate)の増大
疲労終盤 動作の崩れ、筋疲労の影響

痛みが出る”場面”が具体的なほど、介入ポイントを絞りやすくなります。


ステップ3:動作の調整を小さく試す

代表例として、以下の調整は衝撃や負担の方向を変える操作として使いやすい方法です。

ステップ頻度(ピッチ、ケイデンス)を5〜10%上げる

1回あたりの衝撃や負荷率が分散され、結果として負担が増えない、あるいは軽減される場合があります(反応は個人差あり)。

ステップ幅を「狭すぎない位置」へ調整

ステップ幅が極端に狭いと、以下の影響が出やすくなります。

  • 横方向の安定性が低下し、膝・股関節に別の負担が集まる
  • 足部の回内→回外の切り替えがうまく使われにくくなる
  • 足部アーチ(トラス機構・ウインドラス機構)が本来の役割を発揮しにくくなる

動画撮影で着地時に足が中心線に対して極端に狭くないか、疲労終盤で横ブレが増えていないか、などを確認できると良いです。

*自己流で大きく変えるほど、別の部位へ痛みが移ったり、違和感が増えたりする場合があります。
変化は小さく、試す時間も短く、痛みが増えるなら中止を基本に調整してみてください。


ステップ4:必要に応じて環境を調整する

路面の硬さ、下り坂、シューズの特性などは、衝撃や足部の”固め方”に影響しやすい要素です。

症状が出る条件として記録しておくと、判断材料になります。

*環境は「原因」ではなく「条件」として扱うと、対策が組み立てやすくなります。


この章のポイント:
負荷整理(最優先) → 場面記録 → 小さな動作調整 → 環境調整の順で進めると、失敗が減りやすい。


今日からできる3つ(すぐ始められる最小行動)

1. 記録を始める

距離・強度・頻度と、痛みが出る場面(着地直後/下り/疲労終盤など)をメモやアプリで記録し始める。

2. 負荷の急増イベントを探す

過去2週間で「急に距離を伸ばした日」「スピード練習を入れた日」がなかったか確認する。

3. ピッチを5%上げて短時間試す

痛みが出やすい場面(下り/疲労終盤)で、ピッチをわずかに上げて5分間だけ試す(痛みが増えたら即中止)。


Q&A(FAQ)

Q1:歩けるなら走っていい?

歩けても走ると痛むことはあり、「歩ける=走っても大丈夫」とは言い切れません。

歩行とランニングでは動作の定義が異なり、ランニングではフライト期が入ることで、接地時の衝撃や反復負荷が増えやすくなります。

そのため、歩行では問題が表に出なくても、走行条件になると
「受け止める時間が短い」「力が大きい」「切り替えが速い」
といった要素が重なり、痛みとして現れることがあります。

現時点で走れる距離や強度が限られている場合や、走るたびに違和感が残る場合は、無理に判断を急がず、負荷(距離・強度・頻度)の増え方と痛みが出る場面を記録しながら整理することを優先すると、次の対応を選びやすくなります。


Q2:ランニング障害はどのくらいの頻度で起きるものですか?

研究の定義や対象で幅はありますが、ランナーの年間障害発生率はおよそ4〜5割以上とされることが多く、決して珍しいものではありません。

そのため、現時点で痛みがない場合でも「この先も問題が起きない」とは限らず、距離・強度・頻度の増え方や、回復条件(睡眠・栄養・休養)の影響によって、後からトラブルが表に出てくることもあります。

とくに、

  • トレーニング量や強度が増えた時期がなかったか
  • 休養や回復が追いついていたか
  • 違和感が出始めた場面や条件がなかったか

といった点を、「今は痛みがない段階」から振り返っておくことが、予防や早期調整につながります。


Q3:トレッドミルと屋外で何が違う?

一般にトレッドミルは路面が一定で、屋外のロードに比べて凹凸や傾斜、方向転換が少なく、条件によっては着地時の衝撃や負担がやや抑えられやすい環境として働くことがあります。

一方、屋外のロードはトレッドミルよりも路面が硬く、微細な凹凸や傾斜、横ブレへの対応が求められるため、条件によっては着地時の負担が大きくなりやすい場合があります。

そのため、

  • ランニング障害からの回復期
  • 痛みを悪化させずに走行量を再開したい時期

では、負荷を管理しやすい環境としてトレッドミルが有効なこともあります。

ただし、「トレッドミル=常に安全」「ロード=必ず負担が大きい」とは言い切れません。
今の症状や目的に対して、どの条件で走るかという視点で使い分けることが重要です。


Q4:フォームは直すべき?直さないべき?

必要性を見極めたうえで、小さく試すのが安全です。
急に型を変えると効率が崩れ、別の部位に痛みが移ることがあります。

今回の記事では、フォーム全体を一括で直すのではなく、衝撃や負担の出方に関わりやすい要素から順に確認する、という立ち位置を取っています。

例えば、ステップ幅が極端に狭い場合、条件によっては衝撃吸収や剛性を担う足部アーチの働きが十分に使われない一因になりうる、という整理が安全です。

負荷管理とセットで考えることで、過矯正を避けやすくなります。


Q5:ステップ頻度(ピッチ)を上げると負担が増えませんか?

「回数が増える=負担が増える」と感じる方も多いですが、実際にはステップ頻度を少し上げることで、1回あたりの衝撃や負荷率が分散され、結果として負担が増えない、あるいは軽減される場合もあると報告されています(反応は個人差あり)。

あわせて、ステップ幅が極端に狭くなっていないかも確認すると、負担の偏りを見直しやすくなります。


まとめ

  • 歩行とランニングは定義レベルで別物で、負担の前提が変わります。
  • 足は「回内で受け止め、回外で剛性を作る」流れを持ち、アーチ(トラス/ウインドラス)がその理解を助けます。
  • ランニングでは「衝撃×反復」に加え、「受け止め→固める」の切り替えが条件に追いつくかが重要になります。
  • 対策は、負荷の整理→小さな動作調整→環境調整の順で組み立てると、失敗が減りやすいです。

noteの紹介

note版では、今回の内容を「どう考えるかの判断のヒント」として整理しています。

→note記事リンク:ランニング障害|動的アライメント②「ニーイン・トゥアウト」骨格・機能・制御の3層で理解する”真のニーイン”

* note=考え方の土台 → WP=確認の手順(実務編)として順に読むとスムーズです。  

*WordPressは具体的な数値・判定基準を、noteは思考の枠組みを重視しています。


免責

*本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療の代替ではありません。
*内容は筆者個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


プロフィール欄

飯村 剛史(Dr.イイムラ)
医学博士/形成外科専門医
足のクリニック表参道 勤務医/ランニング外来担当
日本医科大学付属病院 非常勤講師

外反母趾などの足趾変形手術、足底筋膜炎、扁平足、ランニング障害など、足・下肢の診療に10年以上携わってきました。

臨床経験と2020年以降の医学エビデンスをもとに、”正確で再現性のある足・下肢の知識”をお届けします。

→各SNS・noteはこちら: lit.link/driimura


参考文献欄(一般化)

本記事は、2020年以降に発表された「歩行とランニングの違い」に関する研究知見を統合し、臨床的解釈として一般向けに再構成したものです。本文は作成時点(2025年末)までの知見を中心に整理しています。

  • 歩行と走行における時空間パラメータの体系的整理と速度変化に伴う変動パターンに関する統合的レビュー
  • ランニングスタイルを2軸で分類する概念的枠組みと5つの主要スタイル分類を提唱した統合的レビュー
  • 人間の歩行・走行におけるエネルギー消費最小化の原則と無意識の最適化メカニズムに関する総説レビュー
  • 歩行から走行への移行における中間速度域での混合使用とエネルギー最適化戦略を示した前向き実験研究
  • ランニングのケイデンス増加による衝撃軽減効果と代謝コストへの影響に関するシステマティックレビュー
  • 歩行時のステップ長変動性とエネルギー効率の関係を実証した前向き実験研究
  • 歩行・走行時のステップ幅変化が下肢バイオメカニクスに及ぼす影響を定量化したデータセット研究
  • 歩行時と走行時の地面反力パターンの本質的違いと関節力学の比較に関する記述的研究
  • 歩行と走行における神経筋制御戦略の違いに関する研究
  • ランニング障害のリスク因子、病態生理学的メカニズム、負荷と耐性のバランスモデルに関する研究
  • ケイデンス調整、エネルギー論に基づくリハビリテーション、ステップ幅調整などの介入手法の有効性に関する研究
  • ランナーと歩行者の負傷率比較および代表的なランニング関連傷害の疫学的研究
  • ウェアラブルセンサーと機械学習を活用した歩行・ランニングパターンの自動分類と異常検知に関する技術革新研究
  • 実験室環境と実環境の差異、非対称性、個別最適化の神経科学的メカニズムなどの未解明課題と今後の研究方向性を提示した研究

個々の論文名や著者名は割愛し、研究デザインの傾向と臨床判断に役立つ論点として一般化して示しました。


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